声もでない。
まるでその機能を忘れたみたいに……。
「おいおい」
陵本が焦っている。
荒い息遣いで、呼吸をするのは精一杯。
(どうしよう……)
自分が自分じゃないみたいだ。
夏の暑さなんか知らないくらいに冷や汗が全身から湧き出る。
「…………っ」
涙が一筋、目から落ちた。
それを合図のように、次から次へと流れていく。
鎌瀬と山内をどけるようにして、影が近づいた。
「ったく………」
小さくそう呟いて、あたしの手を取る。
そして大きい両手で包み込んだ。
「もう平気だ」
そう言いながら。
なんて、
なんて温かいんだろう――――
優しくて、優しくて…。
男の手がどれだけ汚くて、温もりがなくて…
怖かったのかが、すごいよくわかる。
「ふっ……えっ」

![100日愛 [短]](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.790/img/book/genre1.png)