ちぐはぐ遠距離恋愛




そしてその顔がまるで魔女のお告げだったかのように、

下々の行動はエスカレートしていくのだった。



―――――――



「真白ちゃん!」

「今日は何のようですか?」


先輩を横に避けながら聞く。


「これ、返しといてくれる?」


振り向いた先輩が持っていたのは本だった。


「誰にですか?」


受け取りながら目を合わせる。


「代李ちゃんに」

「代李…に?」


先輩は申し訳なさそうに頷く。


「俺あの子少し苦手で…。本借りたんだけど真白ちゃん返しといてくれない?」

「はぁ?何であたしが」

「お願いします!」

「自分のことくらい自分で解決してくださいよ」


わらわらと周りに人が集まるのを横目に確認した。


「またフルーツ王国奢るから」


本を返そうとしていたあたしの手がピクリと止まる。

(フルーツ、王国…)

いつか先輩と一緒に行った夢の場所。


「………っ」

「いい?」


幼い笑顔で聞かれて――――





「わかりましたよ」





あたしはノックダウン。




この先輩の笑顔はどうも苦手。

調子狂うし…
そんな顔されたら断れなくなる。



あたしはため息をつきながら本を自分に引き戻した。