ちぐはぐ遠距離恋愛




それに俺と会う時、前より清々しい。
いや、清々しいっていうか、爽やかっていうか…。

とにかく、素直になっているような気がする。
表情とかがね。


だって、最初はあんなに毛嫌いされてたよ?俺。
もう自覚してるけど。

手だって振ってくれなかったし、目が冷たかった。

でも…


でも!!


今は何だ?!



『真白ちゃん』って遠くから手を振って呼べばさ、

ため息つくときもあるけど、基本振り返してくれる。

その顔もかわいい。


それにさ、俺と話すとき…。

ちゃんと、

ちゃーんと!


笑顔で笑ってくれる。

片眉を上げて、優しい表情で……





俺に笑いかけてくれるんだ……。





これ以上に喜ばしいことはない。

好きな人の笑顔を見れないことがどんなに辛くて、
違う男を見て切ない顔をするのがどんなに悔しくて……。


いつも諒太を恨んだ。

「大切にしないなら、俺にくれよ」って、

何度言いそうになったことか。



それでも、今はもうどうでもいい。

真白ちゃんの笑顔が見れるなら、



それでいいよ……。




(あ、俺って単純?)




気づいた感覚を隠しながら立ち上がる。


「お前ら心配してくれてありがとう。チャイムなるから戻れ」


踵を返した俺に、市之塚が後ろから声をかけてきた。


「もう襲うなよー」

「襲ってねーよ!!」


「ククッ」と小さい複数の笑いが聞こえてきて俺は足早に教室に戻った。