―――「熱中症ね…」
「あい……」
フゥと息を吐いた保健医。
白いベッドに横たわり、額と脇の舌、足の先などに冷たいタオルを置かれている。
涼しくて気持ちいいその感覚にあたしは思わず口が綻んだ。
周りには、付き添いで彩夏と、ここまで運んでくれた優香子と
諒太。
「三人は戻っていいわ、ありがとう。」
「「「はい」」」
三人が保健室を出た。
その間際振り返ってくれたのは、諒太だった。
「あ、ありがとう!」
あたしはねっころがりながらも、諒太に手を振る。
「………ん」
諒太も小さく手を挙げて戻っていった。
その姿があまりにも輝いて見えた。
(変わっちゃったな…)
大きくなった背中。
いつの間にか離れていってしまっていた。
追いかけて追いかけて……
未だにつかめないその広い体。
ちょうど近くに諒太がいたからこうなった……。
そんなのは偶然だって、君は笑う?
――そうかもしれないね。
でも、それでも……
偶然でも、
あたしにとっては奇跡だった。
心配してくれたこと、
君の優しさはいつも通りで、
当たり前なことだと思う。
だけど、
あたしには、知らないふりなんてできないよ…

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