廊下を歩くと聞こえてくる、軽快な足音。


(来た…!)


瞬時にあたしは舞を押して、横にズレた。

それと同時に滑り込むように前に出ていく先輩…。


「セーフ」


あたしはフゥとため息をつく。

最近、高杉先輩の足音を聞き分けられるようになった。

しかもこの先輩、接触度が高くなって来ているのだ。

だからこうして避けないと、後ろから抱きしめられてしまう。


「真白ちゃん」

「何ですか?」


冷ややかな目で見下ろす。

悲劇のヒロインのような体制で廊下に倒れている先輩。
上半身だけ少し起こす、みたいな。


「も、ち、ろ、ん」


あたしは舞に手荷物を預け、自由になった手をコキコキ鳴らす。


「ここに来たからには、理由があるんですよね??」


不自然に笑うあたしに、この場の誰もが苦笑いだ。


「あ、ははははー」

「まさか、あたしに会いに来ただけーとか吐かしませんよね?」



「あ、おいまた始まったぞ!」

「来たよコウ先輩VS大野の闘い」

「今回で何回目?」


そう。
外野の言うとおり、今回で何回目になるのだろうか、このやり取り。

二年生にとってはおもしろいものになってしまったそうで野次馬が集まりだす始末。
最近のマイブームはこれを見ることだ!
――とかいう馬鹿もいるらしい。