ちぐはぐ遠距離恋愛





―――――――放課後。


部活前の掃除が終わったすぐ後。



「大野」

「ん?」


後ろを振り向いたそこには、



「鎌瀬…」



鎌瀬は一応隣のクラスだ。

あまり話したことはない。



「あのさ」

「何?」


「大野ー、終わりー?」

「あー、先生にチェックもらってきて」


陵本に指示を出してから、あたしは鎌瀬に向き直る。


「どうしたの?」

「俺が、こんなこと言うのもなんだし…大野には迷惑かと思うけど、頼みがある」

「頼み?」

「今日サッカー部室内練で、吹部の前なんだ」

「へぇ、珍しい」

「それでさ、コウ先輩に声をかけてくれないか?」

「は?」

「『頑張れ』とか、それだけでいい」

「……………」

「大野にとっては、しつこくて変な先輩に見えるかもしれないけど、サッカー部にとっては大切な存在なんだ。先輩がいなきゃ、俺達まだダメだから」

鎌瀬の目があまりにも真剣だったから、

頷かずにはいられなかった。


それに必死な鎌瀬が何だか面白くて、


あたしは頬を緩ませながら返事をした。



「フッ…わかったよ。一言でいいんだね?」

「あぁ」

「了解。ふふ…」