その言葉に、あたしの腕を掴んでいた先輩の力が緩んだ。
それでも――――
「何してんすか先輩。
早く離れてさっさと教室に戻ってください」
「………………」
「先輩…」
時計はあと三分で授業始まりのチャイムがなることを指していた。
「いい加減にしてください」
声のトーンを低くしたあたしにやっと先輩が焦りだした。
パッと離れる先輩。
「ご、ゴメン真白ちゃん!」
「もう遅いです」
ジリジリと近づくあたしに先輩は手を上げる。
「ちょ、落ち着け真白ちゃん!」
「落ち着け?こんなんにしたのは誰ですか?」
「ま、まっしー…」
黙っていた舞が口を挟みだす。
それでも、止まらない。
(この先輩は、ダメだ)
「先輩」
「はい」
「先輩は、一度痛い目を見ないとわからないみたいですね」
爽やかにいうあたしに先輩の目が逸らされた。
「ゴメン。うん、俺が悪かったよ真白ちゃん」
「おい、あの高杉先輩が本気で焦ってるぞ!」
「さすが大野!」
ザワザワとなりはじめる男子。
「外野うるさい!!」
これもあたしの一喝で静まる。
「いいですか、先輩。
仮にも先輩は受験生です。授業だって、もちろん生活の態度だって大事なときなんですよ?
それなのに…こんなことして……。
あたし、自分のせいで先輩の内心が下がったりするのは嫌なんです!」
「真白ちゃん…」
「だから…」

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