音は立てずに、ドアを閉めた。
一人になって時間が経っても、
涙が出てこなかった。
海来ちゃんの時みたいだ。
「なんでだろう…」
でも、不思議と悲しくはない。
悔しい気持ちもあるけど、裏切った遥菜をシメようと思うような気もしない。
ただあたしは、
その場に突っ立っていた。
ぽつんと置いて行かれたように、ただ一人で。
頭に葵先輩の言葉が蘇る。
『そしたらコウがね、いきなり離れて行っちゃった…。
自分も同じことやってたのに、凄い悲しかった。
と、いうより不安で、なんか物足りなくて…って感じかな』
葵先輩も高杉先輩も、あたしも感じたこと。
諒太も、感じるかな?
諒太も……、
あたしを必要としてくれるのかな―――
よし、決めた。
(諒太から離れてみよう)
その間に自然消滅もできるかもしれないし。
と、言っても…
あたしたちそんなにいつも近くにいたわけじゃないからな…。
離れるって言ったって、何すれば―――
「いいと思いますか?」
「え、あたし??」

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