先輩が目を丸くして「ちょっと待って」と言った。
「真白ちゃんが好きな人は、その幼なじみだったんだよね?」
「はい」
「なのにそいつ彼女作っちゃったの?」
「………」
「あら、まぁ」
先輩が口に手を当てる。
「真白ちゃん……」
「高杉先輩に迫られてから、あたしあいつを諦めようと思いました」
「コウ…」
「高杉先輩は、悪くないです!むしろ、希望なんです。あいつを忘れられる…。
あたし、もう疲れちゃって…」
「そっか…」
葵先輩が視線を下に落とした。
「反対だな、あたし達と…」
「えっ?」
葵先輩が苦笑いをした。
「コウが真白ちゃんの立場で、あたしがその幼なじみの立場だったんだよ?」
「へ…?」
「中学生になって、あいつといるのが何だか恥ずかしくなっちゃったの」
「恥ずかしい、んですか?」
「そう。自分でもわかんないんだけど…どうしても一緒にいれなくなっちゃった。
それであたしも、その幼なじみと同じことしたんだ。
コウのことを、高杉って呼んだの」
「葵先輩…」
「初めて言ったときのあいつの顔を見て、凄い罪悪感だった。
それでも後になんか引けなくて…」
それからたくさんの話を聞いた。
葵先輩が凄い罪悪感を感じながらも、高杉先輩から離れていこうとしたこと。
それでも高杉先輩は諦めず『アオ』って呼び続けて…。
葵先輩から離れなかった。
途中、高杉先輩が葵先輩から離れて行った。
名前も呼ぶことなく、近づくこともなく…。

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