数日後。
｢ねえ真白ちゃん！｣
部活の休憩中、葵先輩が話し掛けてきた。
｢はい｣
｢コウとはどうなったの？｣
｢はい？｣
｢だから、遊びに行ったんでしょ？｣
｢はい…｣
｢付き合うことになった？｣
｢はい？｣
喋り始めてから、｢はい｣としか言ってないあたしを葵先輩が揺らす。
｢恥ずかしがらずに教えてよー｣
｢ちょ…あお、先輩、これぢゃ舌かみゅ…っ｣
｢あ、ごめんね｣
ハッとしてあたしから離れる先輩。
｢あの、付き合ってはないです｣
｢そっか、何で？｣
｢好きな人がいるから、です｣
あたしの言葉に先輩は目をキラキラさせた。
｢誰？！ウチの生徒？同い年？｣
｢あ、はい…。幼なじみです……｣
｢幼なじみかぁ。あたしとコウみたいだね｣
｢そうなんですか？｣
｢うん。幼稚園から一緒だよ｣
先輩は微笑んだ。
確かに
葵先輩は『コウ』で、
高杉先輩は『アオ』だったなー…。
あたしたちより長くいるのに、今でもあだ名で呼び合って。
仲良く話してて…。
｢いいな。羨ましいです｣
｢え？｣
｢あたしだけ、追いてかれてるから｣
｢……？｣
｢あっちはもう、随分先に進んでしまいました。
名前で呼び合ってたのに、いつの間にか苗字になってたし…
知らない間に、彼女も作ってちゃって…
産まれてからずっと一緒に過ごしてきたのに…｣
