全てを聞き終えた先輩は「ブハッ」と息を吐き出して笑った。
「すごい過去…!真白ちゃんお疲れ様」
「はは…。今も傷は残ってます。でも合気道の学びを忘れてるわけではないです」
「そっか。合気道って、どんなことやるの?」
「空手や総合格闘技と違って、相手に攻撃するのではなく、相手の攻撃を無力化します」
「おぉ!」
先輩は合気道というものを始めて理解したらしく、嬉しそうな顔をして聞いてくれた。
「あ、ここだ」
そうこうしているうちに、目的地についた。
店内は甘い匂いでいっぱい。
テンションは急上昇だ。
「先輩、甘いの平気なんですか?」
「あぁ。好きなんだよね、こういうの」
「珍しいですね。男性で甘いもの好きって」
(諒太はダメなんだよな…)
って。
あたしは頭を振った。
先輩といるときには考えないって決めたんだ。
だめだめ。
諒太の“り"の字も出さない。
あたしはため息をついた。
気づかぬうちに、こんなに侵食されていたらしい。
甘いものを幸せそうに口にいれる先輩を見て、また心臓がカタと揺れだす。
―――――
「真白ちゃん」
「はい」
先輩が空を見上げた。
「楽しかった?」
「はい!とてもいい日でした」
笑顔になるほど、本当の気持ちだ。
甘いものもたくさん食べることができた。

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