あたしの言葉に笑顔で答えてくれたのは師範。
「立派になったな、真白」
「師範のおかげです。
長い間、たくさんのことを師範から学びました」
「ですが、師範…っ」
「真白、お前がそうしたいならわたしは何も口に出さないよ」
「師範……」
「やりたいようにやって、目標に達したお前を早く見れること、楽しみにしてる」
「師範!いくら何でも真白に甘すぎです!」
「いいんだよ。
あの子は、大会なんかに出なくても強くなれる」
「何を根拠に…」
「真白、自分のライバルを作らなくていいのか?
大会に出ればたくさんの相手も見つかるぞ」
師範があたしの目を見てそう言った。
「あたしの、ライバルですか?
ご心配なく。あたしの敵は己のみです」
その言葉は一生忘れない。
自分で言ったことだけど、座右の銘にしたいくらい。
「それでよろしい。じゃあ練習に戻りなさい」
「はい!失礼します」
―――――
「師範!」
「お前も長い間、一緒に真白を見てきただろう?」
「う…」
「ああいう奴なんだよ。
わたしたちが目指すべきものも、日本一なんかじゃなくて真白のような心を持つことかも知れぬな」
こんなあたしが戻った後の会話は、聞こえることがなかった。

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