高杉先輩はしゃがんで男を見る。
「綺麗に当たったね」
顎には明らかにあたしが蹴ったであろう痣が赤く残っている。
「腕、引っ張られて……背中も押されたから…」
「思わず足が動いちゃった」と言った場合、信じてもらえるかな……
あたしがそこで声を途切れさせた時、うめくような声が聞こえた。
「う、ぅ…」
「あ、起きた」
先輩が男の顔を見る。
「だれ?お前…」
そう言いながら男は視界を張り巡らせた。
そこに映った、あたし。
「あ…うわ!!」
目があった瞬間ビックリしたように、
上半身を起き上がらせて後ずさりをする姿はなんともちっぽけだった。
「カッコ悪」
「お前か?手引っ張ったの?」
「は?」
「俺の女に手ぇだすな!」
先輩の拳が男の右頬に当たった。
「うわ、痛そう」
あくまで人ごとだけどね。
男は最後にあたしたちを睨んでそそくさと帰って行った。
もう一人、あたしの後ろ蹴りをくらったやつがいたけどまだ伸びてる。
「最近の男って、弱いんですね」
「いや、真白ちゃんが強いんだよ」
そう言って先輩があたしの頭に手を置いた。
それが合図のように、その男はほったらかして……あたしたちは歩きだした。

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