(だいたい、甘いもん食いに行くだけなのにこんなオシャレする必要あるか?)
ショーウインドーから目を離して、下を向いて噴水の周りの石に座っていた。
彩夏に追い出されたおかげで一時間くらい早く出たから待ち合わせの時間まであと三十分近くある。
あたしはちっとも進まない時計を見てため息をついていた。
やけに肌にくっつくこのレガンス(?)がいらだたしい。
そんなとき。
「ねぇ、一人?」
「は?」
あたしは顔を上げた。
知らない高校生くらいの男が二人、あたしを囲むように見ていた。
「わっ、かわいーじゃん!」
「誰か待ってるの?」
(何これ。これもモテ期なの?)
あたしはもう一度顔を下に向けた。
(くだらない。無視無視)
「無視かよー。度胸あるねー、お嬢様ちゃん」
「中学生?小さいね」
(ピキ…ッ)
一つ、理性にひびが入る。
「ねぇ、顔もう一回見せてよ〜」
「もったいないよ?せっかく可愛いのに…
ねぇ、用ないなら俺らと一緒に遊ばない?」
ピーチクパーチクと、無視し続けるあたしの横で話しかける奴ら。
(ホントにうるさいな)
「待ち合わせしてるんで。離れていただけますか?」
「やっと喋ったよ!声も可愛い!」
(可愛い、可愛いって…ウザい)
「えぇ?いいじゃん。十分くらい」
「ムリだ」
「素直になりなよ」
「は?別に嘘なんてついてねぇんだけど」

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