あたしは途方もない時間の使い方にただ固まっていた。
彩夏の声でロボットのようにキコキコと首を動かす。
「あの、さ」
「ん?」
「あたしの髪の毛に、何した?」
「え?いや、ただ結んだだけだけど」
「結ぶのなら彩夏の腕だったらすぐでしょ?」
「いや、他にもコンディショナーに香りづけコロンに、ワックスつけたりしたから……」
「コンディショナーと、コ、コロ…?」
追いつけない頭。
「一時間って凄い方だよ?慣れてないともっとかかるし」
「それ、何になるの?」
「いや、髪全体になじませるといろいろいいことがあるの」
「へ、へぇ」
あたしはただ目を逸らして相槌を打つことしかできなかった。
(恐るべし、―――オシャレ)
そんなこんなで冒頭の言葉とともに自分家になのに背中を押されて追い出され……
―――――――――
今に至る。

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