スッと温もりが離れた。
置いてかれた右手は、ピクリと反応する。
クーラーの風が少しずつ温かさを冷ましていった。
「もう、いいよな」
「……うん
ありがとう…」
諒太は何も返事をしないで、ドアの奥に消えて行った。
無性に寂しくなるそれが、何だか心地好い。
もう、
慣れちゃったのかな……。
それからあたしはまた気を取り直して勉強をし始めた。
10時過ぎ頃に凌の部屋からぞろぞろと足音が聞こえた。
ヘッドフォンを外し終えたくらいにドアが開いて、凌が顔を出す。
「諒太くんたち帰るよ」
「あー、うん」
あたしは自分の部屋を出て、玄関に向かった。
「肉じゃがありがとう。智春さんにもよろしくね」
「うん」
答えたのは将ちゃん。
それと同時に将ちゃんの手が動いて、あたしに伸びた。
その瞬間。
「や…っ」
あたしは右手を上げて将ちゃんの腕を払った。
自分でもよくわからない。
諒太に温めてもらっていた手だった。
将ちゃんはびっくりした顔をしたけど
またすぐに優しい表情に戻った。
「さっきは、ごめんね」
それでも、悲しい顔だった。
「あ…あたしの方こそ、ごめんなさい……」
将ちゃんの払われた腕を眺める。
そんなに力は使わなかったから、赤くなっていたりはしなかった。
だけど、だけど……
「「おじゃましました」」
靴を履いて出ていくその背中を見て、胸が苦しくなる。
あたし、
将ちゃんを傷つけちゃった………っ!!

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