小説でありがちな先生との恋…そんなのあるわけないと思ってた。

先生をそんなに愛せるわけない

先生にそんなに愛されるわけない


そう思ってた……









「赤点が2教科に…あとは皆平均以下。学年順位は…?」
「652位です!」

「一年生の生徒数は?」

「652人です!」

「つまり最下位じゃないのよ」

「えへへ…」
どうして私はこんなにバカなんだろう。
もう笑うしかない。

「えへへじゃない!
赤槻さん!!あなたこのままだと進級できないわよ」
担任の唾がかかる。

代々木先生、香水変えたかな?
いい年してお洒落もないだろうに…。
賞味期限の切れた女。


「赤槻さん聞いてるの!?
まったく…。今日の放課後職員室に来なさい。
課題を渡すから」

「はい…」



私だって、好きで赤点とってるわけじゃないのに。

赤槻の赤は赤点の赤

「ぷっ」

笑い事じゃないのに、笑えてくるよ。


「あ…後藤先生」

今日はついているのかもしれない。

代々木のオバサンには怒られたけど、

後藤先生に廊下で会えた。
後藤祐希先生は私達の体育
の先生だ。

多分この学校で一番モテている先生だ。

新任でまだ若いからかもしれないけど。

私もなんとなく目で追ってしまう。

「おはようございます」

「おはよう」


私が先生とできる会話はこれだけ。

すれ違いざまの挨拶だけ。

「うん…まぁカッコいいかな?」

私の中に後藤先生がいたのはここまでだった。

次の瞬間には始業ベルが響いて、私は教室へダッシュしていた。