Strawberry Junior

「金魚掬いしません?」

2人が食べ終わると、威智悟くんが言った。

「うん、いいと思うよ?」
「先輩のために大きいの掬いますねっ」

平気な顔でニカっとする威智悟くん…。

今日は、ドキドキさせられっぱなしだよ…。

威智悟くんは慎重に金魚を見極めると、

「おっし!」

さっと一発で掬い上げ、お椀に入れた。

「凄ーい!お見事だねっ」
「記念に持って帰って下さい」
「うわぁ!ありがとう!大切に育てるね」

私がそう言った時、ケータイが鳴った。

「棗から電話だ!…どしたの?」
『ねぇ、今から皆で近くの海辺で花火しない?』
「あ、いいね!しよしよ!ちょっとまってね。…威智悟くん、今から皆で花火しないって話になってるんだけど…?」
「勿論、行きます!」
「じゃあ何か買って行った方がいい?」
『バケツも火もあるから、花火をちょっと買ってきて貰える?』
「了解っ」
「桐島先輩っすか?」
「うん。花火買って海辺に来てだって」
「じゃあ近くのコンビニでも行きます?」
「うん!」

私達は駐輪所に向かった。

「あ!どうしよう!私、自転車乗って来てないんだった!」

私ってボケだなぁ…。

「ははっ。乗って来てなかった事忘れてたんっすか?俺の後ろに乗って下さい」
「でも…、私重いよ?」
「女の子1人くらい、いくらヘタレでも出来ますよ(笑)」
「ホントに重いもん…」

運べるか知らないけど、女子にしては重っ。とか思われたくないもん…。

「大丈夫っすよ。乗って下さい。それとも、俺の後ろになんか、乗りたくないっすか…?」

その上目遣い、反則だよ…。可愛すぎっ。

「『なんか』って言わなくても…」
「じゃあ乗って下さいよ」
「じゃあ、お言葉に甘えて…」

ちょこん。

うわぁ…。2ケする時跨いだことしかなかったから、横座りなんて初めてだしちょっと怖いな…。

「きゃっ」

そう思っているうちによろめきながら発車していた。

「やっぱり降ろして?重いからよろめいたんだって」
「重いからじゃないっすよ。先輩が怖がってるっからっす。ちゃんと掴まってて下さい」
「うん…」

私は威智悟くんの腰にキュッと手を回した。

「これでいい…?」