向かった。彼女の車椅子を押しながら、駅前のスーパーまでの道すがら、とりとめのない会話を交わす。そこには僕がずっと待ち侘びていた『幸せ』があった。
「今日のおかず、何にする?」
「私は何でもいいよ」
「じゃあ奮発してステーキにしよう」
「え?……でも……」
「いいじゃん。焼くだけだし」
「そんな理由ね」
 彼女は笑い出した。その笑顔が眩しい。僕は栄養のバランスも考え、サラダも籠に放り込んだ。
 マンションに戻り、ノリちゃんを居間に待たせて、キッチンに立つ。男の料理と云うものは、かくも豪快だ。ステーキのたれを冷蔵庫から取り出し、絡めてから焼く。大皿に盛り付けた後、さっき買ってきたサラダを添えて、その横にちょこっとした惣菜を作って並べる。見た目にもちょっと豪勢だ。
 彼女はそれを見て驚嘆の声を上げた。
 僕の見守る中、彼女が一口、口の中に入れた。固唾を飲んで見詰める僕に、『美味しい』と、再び驚嘆の声を上げる。僕もその姿を見ながら食べ始めた。
「俺の腕も満更じゃないだろ?」
「うん。びっくりしちゃった」
 幸せそうに食べる彼女を見ながらの食事はいつもに増して美味しく感じる。僕らの生活はこうして幕を開けた。
 誰に左右される事なく、今は自宅のパソコンに向かって競馬を思う存分、満喫する事が出来る。これが僕の仕事だ。お蔭で空いた時間はたっぷりあるので、彼女の世話も出来る。
 そんなある日、ハルオちゃんとカッちゃんが訪ねてきた。
 二人、声を揃えて『結婚式くらいしてやれよ』と言う。確かに女性にとっての結婚式は特別なものだ。その日は四人、ビール片手にそんな話で盛り上がった。
「ノリちゃん、日取りはいつがいい?」
「私が決めるの?」
「だって結婚式の主役は花嫁だから……そうだなぁ……ノリちゃんの誕