雪の降り頻る中、僕は祖父に連れられて、町立池尻舞戸中学までやってきた。転校の手続きと、教職員への挨拶の為だ。
 その日のうちに教室に連れてこられ、僕は竹組の戸を潜った。この学校は一学年に松組と竹組の二クラスある。
 僕はクラスメイトの前で自己紹介をした。
「井上なおとと言います。よろしくお願いします」
 拍手もなく、しばらくはその独特な津軽弁にも戸惑っていたが、次第に慣れてくると、クラスにも溶け込んで行った。
 席は窓際の一番後ろ。僕の前には優等生のナカタ君。その隣にはメガネを掛けた美人のヤマシタさん。このクラスの女子は結構青森美人が多い。男の子は学校の規則で全員坊主頭。僕も『規則だから』と、さっそく坊主にさせられてしまった。
 ナカタ君は体格的には僕と然程変わらないが、喧嘩なら誰にも負けた事がない。これと云って『不良』ではなのだが、以前、五所川原の不良連中に絡まれた時、たったひとりで全員を熨してしまった事がある。
 僕は、ナカタ君と友達になった。彼に誘われるがまま陸上部にも入った。
「なおちゃん。俺と腕立て伏せで競ってみないか?」
 その挑戦状は、ある日唐突に叩き付けられた。体力的に特に自信はなかったが、『勝って当然』と云う顔をしているナカタ君を見ていると、僕の闘争心に火が着いた。
「負けませんよ」
 一回。
 二回。
 ……百回。