青春の蒼いカケラ
井上 尚人


    プロローグ~青春競馬編~


 取り敢えず、青森の高校を卒業した僕たちは、ハルオちゃんと上京して就職を決めた。
 しばらくはお互い頑張って仕事を続けていたものの、いつしか二人とも辞めて自由の身になっていた。
 それから数ヶ月後の事、はるおちゃんが僕の部屋にニコニコしながらいきなり飛び込んできて、僕を見るなり、大声で『面白い事があるぞ』と叫んだ。
 まだ春浅い五月の天気の良い午後。
 僕は少し興奮気味のハルオちゃんを見ながら、少し冷めた口調で『なんだよ、また女か?』と尋ねると、『いやいや』と言いながら、懐からクシャクシャに丸まった競馬新聞を出し、バンバンと叩いて見せた。
「儲かる話だ……世の中まだまだ捨てた物じゃない」
 それでも尚、訝しげな表情を浮かべる僕に、ハルオちゃんは興奮しながら先週のレースの話をし始めた。いかにも未だ興奮が収まりきらないといった感じだ。
 ハルオちゃんの話によると、先週、大井競馬のトゥインクルレースに行ってきたらしい。
 ポケットの中から出てきたなけなしの一万円札を握りしめ、祈るような気持ちで買った夢馬券は、見事に五十倍にもなった。
 ハルオちゃんは興奮し過ぎていて、何を言っているのかが僕にはさっぱり分からない。
 それでも何とか『嬉しいんだな』と云う気持ちだけは汲みとる事が出来た。
 そんな僕に、『明日一緒に行かないか?』と誘ってきた。僕にはまったく知らない世界だ。それでも何度も誘ってくるので、僕は取り敢えず、首を縦に振った。
 煮え切らない僕の前に、ハルオちゃんは翌日、スポーツ新聞とアンパ