ルナに好意を持っている客は多い。


本人は気付いてないようだが。


店の中では俺がいるし、帰りはサハルドがいるから誰も声がかけられないんだろうがな。



『おい』

『何』



珍しくサハルドが声を掛けてきた。


俺に声をかけながらでも、目線はルナに向いている。


こいつがいつもルナの何をそんなに心配しているのかよく分からない。


再び俺に目線を戻したサハルドが口を開いた。



『最近外が物騒みてぇだけど、心当たりは?』

『ない…と言っても昔から何故だかよく喧嘩を売られる。そういう輩かもな』

『…ルナを捲き込むなよ』

『お前に言われなくてもそれぐらい分かってる』



鼻を鳴らし、調理場に姿を消すサハルド。


いつもルナの一番傍にいるのは自分だと言わんばかりの態度だ。


苛つく。


ルナにとって俺はどういう存在なんだろうかと考える。


聞かなくともきっと…サハルドよりも下なんだろうがな……。