『店の掃除から』

「はい」

『…敬語じゃなくていい』

「でも…」



またしても返事を待たずに私に濡れた布巾を渡すとスタスタと歩いていってしまった。


ソルさんがいいって言ってるし、敬語じゃなくていっか。


私は腰ぎんちゃくの様にソルさんについて回り、見よう見真似で掃除をした。


掃除をするのも生まれて初めて。


普通はみんな自分でちゃんと掃除するのよね。



『もしかして、初めてなのか』

「え?」

『掃除』

「…うん」



掃除をしたことがないということがこんなに恥ずかしいことだと思わなかった。


私は思わず下を向いてしまった。


きっと呆れてるであろうソルさんの顔を見たくなかった。



『変わってるな。少しずつ覚えればいい』



ソルさんの言葉に顔を上げるとソルさんはどんどん掃除を進めていて、こちらを見てはいなかった。


馬鹿にされるか呆れられると思っていたから、ソルさんの言葉が凄く嬉しかった。



「ありがとう」