月夜の太陽

座り込み項垂れていたルナがスッと立ち上がり、無言のまま後ろに方向転換するとドレスを持ち上げ走って部屋を飛び出してしまった。


シエル様は大きなため息をつき、今度は悩ましげに頭を抱えてしまった。



『今回は父様が悪い。やりすぎだよ』

「私もリオと同意見よ」

『私も承諾したのですから悪いのはシエル様だけではありません。それに処罰を下されるというのは元々決まっておりましたし、私もルナも承知していた事です』

『それは違うわ。貴方に断るなんて選択肢がないことはシエルは勿論のこと、私たちには分かっていたもの。承諾する以外貴方に道はなかった。そうでしょう?』



ローズ様の言葉にリオは呆れたような笑みを零し、ロナウドさんは苦笑いを零していた。


今までシエル様には数え切れないほど迷惑をかけてきた。


俺もロナウドさんの様に何かをお願いされれば断れなかっただろう。



『今は混乱していて感情的になっていますが、そのうちルナも落ち着きますよ。ですからシエル様も顔を上げてください』

『今の私に優しい言葉を掛けてくれるのはロナウドとソルだけだな』

『ロナウドさんはそうかもしれませんが、俺はルナ次第ですよ』



緊迫した空気が今は嘘の様に和やかで明るい空気に包まれている。


今の雰囲気の様に、早くルナの心も穏やかにしてやりたいと思った。



『ルナのところへ行ってきます』

『そうだな、お前が行くのが一番いい。頼んだぞ』



自分で計画したことなのに落ち込みを隠せないでいるシエル様に軽く会釈をし、俺は部屋を後にした。