月夜の太陽

城に着き、客間の目の前に着くまでの間特に会話はなく、ルナの鼻をすする音だけが響いていた。


ルナの肩を抱き手を握ってやることしか出来なかった。


今言葉を掛ければルナの涙は余計溢れてしまうだろうと思った。



『入れ』



姿はまだ見ていないのに、声だけでシエル様の怒りが相当なものだと伝わってくる。


俺たちは体を強張らせずにはいられなかった。


使用人がドアを開き中に足を踏み入れると、重たい空気を体中で感じた。


ソファーに腰掛けているシエル様は真っ直ぐに俺たちを捉え、その目は震えてしまいそうな程鋭く恐ろしかった。


不安そうな表情を浮かべたローズ様とロナウドさんが心配そうにこちらを見ていた。



『座らなくていい。言い訳を聞く気はない』

『そんなッ父様ッッ!!ルナの言い分も……』

『お前は黙っていろ』



リオの言葉を遮ったシエル様は冷たい目でルナを見据えた。



『ルナ、お前は自分がどれだけ最低な事をしたのか分かっているのか。事情を知り理解した上でお前は決断した。それなのになんだこれは。ロナウドに希望を与えより深い絶望へと突き落とした』

「……はい」

『シエル様、私の事はいいんです』

『いいわけがないだろう。ルナ、どう責任を取るつもりだ』