月夜の太陽

店は相変わらず忙しいが、どんなに忙しく動いていてもルナの事を忘れることは出来なかった。


昨日のルナのことは勿論、今まで接してきた時間を忘れられない。


それどころか未来さえ思い描こうとしてしまう。



「大丈夫?」

『何が』

「今日は一段と元気がないように見えるから」

『気のせいだ』



エレナは納得のいかないような顔をしていたが、これ以上詮索されないよう注文を取りにいった。


本当によく見ているなと思う。


俺だけのことじゃなく、家族の事をよく見ている。


注文を取り終え厨房にいる兄貴の下へ向かっていると、突然裏口のドアが開き勢いよく壁にぶつかったため、大きな音が店中に響き渡った。


客は驚き、皆一斉にドアに視線を向けた。


だがそこに立っている人物を見て皆息を飲んだ。


俺は幻でも見ているんじゃないかと思ったほどだ。



『…………ルナ』