怒られる事を覚悟して、私は先日の盗み聞きしてしまった話をすることにした。



「ごめんなさい……ロナウドとの話を聞いてしまったの」



こめかみを押さえながら大きなため息をついたお父様は眉間に皺を寄せ、怒っている様な呆れている様な目で私を見てきた。



「……ごめんなさい」

『謝るくらいなら盗み聞きをするのを止めなさい』

「そんなつもりはなかったんだけど……はい、以後気をつけます」



元々楽しい雰囲気ではなかったけれど、余計に空気は重たいものになり息苦しさすら感じられる。



『それで、お前はどうしたいんだ』

「ロナウドとの婚約はそのままにしてほしいの」

『本気で言っているのか?当たり前だが、そうなればソルとは一緒になることも会うことも許されなくなるんだぞ』

「分かってる…ちゃんと分かってるよ。でもロナウドを見捨てるなんて出来ない」



厳しい表情から悲しそうな表情に変わるお父様。


お父様は私の幸せを考えてくれてる。


その想いはいたいくらい伝わってくるし、私が必死にお願いすればロナウドと婚約を結び結婚しなくともお父様ならデトイス国の重役を説得してくれるかもしれない。


だけどそんなことをすれば、デトイス国が我が国に不信感を抱き、その歪みは大きな亀裂に発展する恐れがある。


国を巻き込んでまで自分の想いを貫く事なんて……私にはできない。