ロナウドがお父様のところへ行ってしまって、私は1人ソルの傍で話をしていた。


こうしてべらべら喋りかけても勿論表情一つ変えず言葉も返ってこない。


だけどお店で出会ってすぐの頃のソルを思い出し、思わず笑ってしまった。



「あの時はちゃんと起きてたけど、今みたいに表情一つ変えなかったよね。でも本当は心の優しい人なんだって知って、どんどんソルに惹かれたの」



ソルの頬に手を添え、そっと口付けをした。


少し触れるだけのキスをした後顔を上げてやっぱり私は笑ってしまった。



「普通は眠っているお姫様の唇に王子様がキスをするものでしょ?告白も私からしちゃったし、何だか肝心なところで私たちはあべこべね」



今零している笑みも無理して出していることぐらい自分でも分かってる。


無理をしてでも笑っていないと毎日毎日泣いてしまいそうなの。


ねぇソル、普通なことなんて求めてない。


普通じゃなくてもいいから私の口付けで貴方が目を覚ましてくれたらって…………。


沈んでいきそうになる気持ちを堪えていると、タイミングを見計らったように使用人が夕食の時間だと知らせに来てくれた。


私は気持ちを紛らわすかのように返事をし、ソルの頬にキスを落として部屋を後にした。