月夜の太陽

"剣を鞘に納めろ"

『…………』

"使いこなせない武器はがらくたと同じだ。ぐずぐずするな、レイドが来るぞ"



カタカタと震えている黒く光っている剣を無理矢理鞘に納めると、暫くすると剣は大人しくなり静かになった。



『俺は……俺はどうすればいい』

"レイドの体を押さえ、奴の胸、心臓の上に手を当てろ"

『それだけでいいのか』

"俺が術をかける。お前はその時に力を込めるだけでいい。加減を間違えればお前もただじゃ済まない……相手は元々殺すはずだったんだ、死んでも責任を感じる必要はない、気楽にやれ"

『あぁ、そうだな』



傷口は塞がり汚れだけが残った体を起こし、闘技場へと足を進めた。


独りな筈なのに独りじゃない。


こんなに力強い味方が一緒にいてくれる……そんなつもりはないのかもしれないが、少なくとも俺にとってはそういう存在だ。


綺麗な夕焼けが広がる空を見上げ、深く深呼吸をした。