涙を流すお母様の手を慰めるようにお父様が握った。



「カインの部下がクーデターを起こした時、カインは急いで私たちを逃がしてくれたの…その時彼はこう言った……『生きろ』と………」



こんなに辛そうなお母様を見るのは初めて。


昔の想いが溢れているのか、気持ちがひしひしと伝わってくるようだ。



「だけど、私は炎で燃え盛る屋敷に引き返した。アルファナさんの証拠が欲しかったのは勿論だけど、カインが心配だった」

『どうして…そんな男の心配なんて……』

「不器用だけど、本当はとても優しい人だと知ってしまったから…かもしれないわ。でも、私が戻ったせいで彼は死んだの…私を庇ったのよ」

『何から庇ったんですか?』

「クーデターを起こした張本人からよ。彼は私の為にアルファナさんと交わした契約書をジオラさんに預けてくれていた。それがなければアルファナさんの悪行を罰することは出来なかった」



お父様の手をギュッと握り、肩に頭を預けたお母様が私とリオに優しい笑顔を向けた。



「その時カインが助けてくれなかったらお腹の中にいたリオとルナも私ともども死んでいたわ」

『妊娠…していたんですか?』

「なんだか運命を感じない?カインの子供とそのカインが守ってくれた私の子供が出会うなんて」