だけど、これはかなりまずい状況だ。

この二つが戦争となると、一般人にも被害が出るかも・・・。

「南さんがな、きめたんだよ。」

苦虫を潰したような顔で龍樹は言った。

南昌也〈ミナミ マサヤ〉

蝶藍の総長。

あたしも、何回かあったことがあるけど、あいつはやばい。

よく言えば、頭の回転が速い。わるく言えば、狂ってる。


「南か・・・。あいつ嫌いなんだよ。」

何度か、暴行をくわえられたっけ?

なんでも、女が野郎を引き連れてんじゃねぇ、みたいな言いがかりを付けられたきがする。

「おまっ!!南さんを呼び捨てとか度胸あるな。」


龍樹は南が相当怖いのだろう。顔が真っ青だ。


「私、鬼蘭の総長も好きじゃないな。なんか・・・南さん大好きっ!みたいな感じで」

理沙の言うとおり、鬼蘭の総長、笹木野 百合奈〈ササキノ ユリナ)は南の言うことは
なんでも聞き、南のためなら命も惜しまない。そういう女だ。

「南さんに女ができたら、その女を潰してるらしいよ。南さんも、わかっててつくってるらしい。ほんとタチ悪いわ・・・。」

南は女の的。嫌な男だ。



「龍樹。あんた蝶藍抜けな。」

あたしの言った言葉に驚いた様子で龍樹は


「言うと思ったよ。」

と、にこやかに笑っていた。


「なんで笑ってんの?キモい」

さっき、入ろっかなーなんてつぶやいていたのが嘘みたいな晴れ晴れとした顔で、

「俺、二重スパイなの。本命は黒狼だからあんしんして。」


なんだこいつ。なんかムカつく。

「じゃ、さっきの言葉はなんだよ。」


「あー。二人が俺のこと知ってるかなー。って試しただけ。」

あ、めっちゃムカつく。

あたしは無言で龍樹のおでこにデコピンした。思いっきり。


「いでっ!?なにすんだよ!!」

相当痛かったのか、少し涙目だ。