────…… 10時半か。


随分早く来てしまった。


俺は自販機で温かいコーヒーを買い


時計台の下にあるベンチに座った。



落ち着け、落ち着け、落ち着け…




駄目だ…。


余計緊張してきちまった〜!!




俺は目を閉じて呼吸を整える。



大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫…………



自分に暗示をかけた。



───こんなに緊張したのは……


初めてマウンドに立った時以来か。


俺はあの時、まだ小学四年生だった。


大袈裟かもしれないけど、あの時は一世一代の大舞台に立った気持ちで投げきった。



…今日だって、真っ正面から彼女にぶつかっていけば

きっといい結果がついてくる…はず。




もし、…俺のこと、なんとも思っていなくても


時間をかけても俺のこと、好きになってもらえばいい。



俺は目を開ける。



時間は11時5分前…。









彼女の姿は……まだない。