「ほら、ハル、行こっ!」


大介が無理矢理、俺の背中を押しながら、彼女の横を通りすぎる──…



彼女をもっと知りたい。



彼女をゆっくり見た。



…あ、



彼女も俺を見てて



一瞬、心が踊ったけど


彼女はすぐに走り去ってしまった。




はーーーっ…



何故か出てくるため息。



「ハル?ため息つくと幸せ逃げちゃいますよ?」



俺の背中を押す大介が、のほほんとした声で言うから、なんかカチンときて



「別に…逃げる幸せなんかねーし……」



「あ〜、その言い方可愛くないっ」



「可愛くねーよ、俺は。」

「…ふーん。」



真と三崎先生がいる席が見えた。



「…大介は、好きなヤツいんの?」



さっき大介に言われた事を今度は俺が大介にした。



「遅いっ!彼女からの電話かよ?!いいなぁ〜俺も欲しい〜!」


俺たちに気付いた真が顔をしかめながら悔しがるから


「そんなんじゃないって」


椅子を引く。





俺の後ろから自分の席に移動しようとした大介が、俺の耳元で囁いた。



聞き間違い?


……でも、はっきり聞こえた。


『やっぱり』ってのと『まさか』ってやつ。



目の前が真っ暗になった。




大介は





「おーちゃん。ハル、諦めたみたいだから俺、頑張るよ。」




……大介もゆっくり椅子に座った──…