「美桜、携帯鳴ってたよ」

席に着くと、涼が私のコートを指す。



「あ…、はい。失礼しました。」

いつものように返答すると、



「…へぇ。夫婦なのに敬語なんですね。」



晴海くんがジッと私を見ながら話す。




──…落ち着いて、落ち着いて…


「…一応、年下ですし、まだ癖が抜けなくて。」


微笑みを作って答える。




「……ふーん。なんかヨソヨソしいんですね」


晴海くんは厳しい言葉を並べる…。



それでも彼から目が離せなくて……


瞬きをすることも忘れていた。


涼とはまた違う綺麗な顔立ち。


今は鋭い目元も、笑うと垂れ目になるの分かってる。

血行の良い唇が……私をドキドキさせる。


冷静に装ってるつもりでも、きっと…私の顔は、赤くなってるかもしれない。




──そんな私たちの間に割って入ってきたのは



「僕も話に混ぜてよ〜♪」

さっきまでとはうってかわって、笑顔の大ちゃん。



「おっ?大介〜。腹いっぱいになったから元気出たか〜!」


真くんが満足そうな笑みを浮かべて、私も大ちゃんが笑ってくれたことが嬉しくなった。




「久し振りに会ったから、もっと話したいよね」


涼が口を開いた。


「今日は遅くなってもいいから、坂本と昔話でもしておいで。」


席を立ち、コートを手にとる。



──は…?

ちょっと待って?!



突然のことに涼を見上げるけど…



「私が居ては落ち着いて話もできないだろうから、私は先に帰るから。」


伝票を持ち、



「では、私の妻をよろしく」


微笑みを見せて立ち去った。



「センセ〜!ごちそうさまで〜す!!」


真くんが席を立って、両手をブンブン振ってた。



……あの人は何を考えているのかさっぱりわからない。



それに、この状況って…