涼が…晴海くんの学校の先生だったなんて知らなくて──…。



まさか


こんなところで再会してしまうなんて思ってもいなかった。



あの人は全てを知ってて、私を試しているの?



晴海くんは、私に気付かなかった……よね?


…そうだよね、濃い化粧して、服装も前の私から比べれば全然違うし。



けど、涼が余計なこと言うから気付かれたかも…。



彼に合わせる顔なんかないのに。


──…ふうっ。


ため息をついて、鏡を見た。




…彼の私を見るのが怖くて、ずっと目を合わせなかった。



ホントは、真っ正面から彼を見たかったけど、反らされるのが怖くて



こんなに臆病な自分、まだいたんだ。



涼との愛のない結婚をしたり

平気な顔で嘘をついたりと、大胆なことばかりをしてきたつもり。




恋は人を臆病者にする。



…今は彼のことは考えちゃダメ。



私は『三崎美桜』として彼らと接さないと。



…私が期待しないように。



私は鏡の中の自分を睨み、トイレを後にした。