「…遠いんですか?転勤先は……?」


先生の突然の申し出に困惑する私…。



「いや、転勤先から大学に通うのは大変かと思ってね。」





…相変わらず自己チューな……


大学進学やめる?


…どうすればいいのかわからず私は人差し指を咬んだ。



「じゃーさ、こうしたら?」


リビングを出たはずの瀬南くんの声が、私の後ろから聞こえてきた。


慌てて振り返ると



「義姉さんは、ここから大学に通うのはどう?」



「へ?ここ……って?」


瀬南くんはにっこり笑い

下を指差し



「ここ。うちの実家。」


え?



「母さんの味をマスターしたり。まぁ、いわゆる花嫁修行ってヤツね。


あと、義姉さん、言ってたじゃん。」



……何を?



「父さんの講演会とか、そういう集まりの手伝いしたいって。」



えぇっ?!


そんな話、一言も……。



目を丸くして瀬南くんを見てたけど、お構いなしで


「大学の勉強だけじゃなく、イロイロ勉強したいんだってさ。


さすがお兄様が選んだ義姉さんね〜」



瀬南くんは私の肩をポンポン叩いた。



「それにさ、卒業したら好きなだけ一緒にいられんだから、勉強できるうちにしとけばいーんじゃねーの?

義姉さん、まだ若いんだし。」



最後にそう言った。




……瀬南くん…。


…『まぁ、素晴らしい!!』


お茶を運んできたお義母さんの声。


私の手をとり、


「美桜さん……そこまで考えていたなんて…本当に嬉しいわ。いいお嬢さんがお嫁に来てくれて、本っ当、母さん嬉しいわ!



ねぇ、お父さん」


お義母さんの後ろに立っていたお父さんも『うん、うん』頷きながら、

「お前たちのその考えに感動した!


…涼、私たちに美桜さんを預からせてもらえないだろうか?」


お義父さんは、話を途中から聞いていたみたいで、私と先生が二人で話し合って、こう決めたと思ったみたい……。