「用事があったから早めに出てきたんだよ。」



上機嫌な先生。



「まぁ、美桜さんも涼〈リョウ〉に早く会いたかったのね。」



お義母さんも、にこやかだ。


今日は、お義父さんは接待で留守だったけど、代わりに瀬南くんが座って、コーヒーを飲みながらモクモクとケーキを食べていた。



けど、先生と瀬南くんは一度も目を合わせていない。


…変な空気が流れてるけど、お義母さんの存在で中和しているみたい。



「美桜さん、もうすぐ卒業ですね。」


「──はい。長いようで短い三年間…でした。」



──…先生に出会ってからはすごく長く感じたんですけど…。


それは口には出さなくて…、私も紅茶を含んだ。




他愛のない話で時間は過ぎていく──…。


色々話はしているものの、みんなの会話は全然頭の中に入っていなかった。



時間ばかりが気になって…何度も何度も、時計に目を落とす。



もう…さすがに帰ってるだろな…。待たされるの嫌いって言ってたし。



──そんな時、バッグの中でマナーモードにしてあった携帯電話が震えて、



「ちょっと失礼します…」


バッグを持って席を立ち、廊下に出たところで携帯電話を手にした。



「…はい。くーちゃん?」

『そう、あたし。…今どこ?』



「え…。先生の実家だけど──…」



『…大ちゃんから、連絡あったよ?なんか、おーちゃんに何回電話かけても繋がらないって。

……おーちゃん、この頃変だよ?』


未来の口調が変わった。



『なんか…隠し事してる感じ。あの先生来ても嬉しそうじゃないし…。

ママやみーちゃんはだませても、あたしにはわかるんだよ。だてにおーちゃんと張り合ってたわけじゃないんだから…。』



態度に出さないようにしてたけど未来にはバレそうで…。


でも、その原因を知られるわけにはいかない私は……