「あのね、突然、電話したのは、……大ちゃんにお願いがあって──…」




受話器の向こうの大ちゃんの様子を伺う…。




どう切り出そうか?そんなことを考えてたら、



『お願いって、ハルのこと?』


さらっと言われてしまった。





『ハル』…。名前を聞くだけで、ドキッ──……心臓が暴れだす。




こんなんで、ハルくん本人に会えるのだろうか…




──…ううん。そんなこと考えてる時間はない。





私には時間がないんだから……。



「──…私、ハルくんに会いたいの…」




…大ちゃんはどんな反応するんだろう……。




『……ハルと二人で?』




「………うん。」






『……おーちゃん。


ハルが野球やめたことは知ってる?』





「……─うん…。」




……そう。彼は野球をやめていた。




私は交通事故にあってから、一年間リハビリをした。


高校一年の秋の終わり頃、完治し、その足で野球場に向かってた。




久々に聞いたボールの音。
スタンドの歓声。





でも、ハルくんの姿はなかった。



スタンドで話す生徒の声が私の耳まで届いてきた。



「遠藤くん、大丈夫なの?」



「なんか、手術するって担任言ってたよ」


「え〜っ可哀想!私が慰めてあげたいっ」




…嫌な予感がした。

私と似てたから。



そして予感は的中。


…彼をマウンドで見ることはなくなった…。