整った先生の顔がとても憎らしく感じた。…この人は、こうなることをわかっていたんだ。


………すべて、この人の計算済みのことなんだろう。


私がこうして先生に会いに来ることも。



………けど、



「お話があります。」




真っ直ぐ、先生を見た。




「お願いがあります。」



「妹さんのことでしょ」



先生は一歩、近付いてくる。



「……はい。」



「任せて。私がなんとかしてあげるから──。私にとっても、大切な義妹になる子だからね。」




また、一歩、近付いてくる。




でも、私は逃げなかった。




「いい子だ。」



私の目の前で止まり、先生は私を抱き寄せた。




「…君の口からから、昨日の返事が聞きたいな。」



耳元で囁く。




先生の顔は見ずに、



「…先生と結婚します。」

そう言った。




好きでもない男との結婚。



意外と冷静でいる自分に、自分が驚いてるくらい…。


先生に対して『愛』も『情』も何にもない。




私の第六感が、この男を好きになることは死ぬまで、一生ないだろう──…そう叫んでる。



私を抱き締める先生の温もりを、服の上からでもわかるくらい感じてるけど、



それと同時に、だんだん冷えきってくる私の心…。



自分に言い聞かせる。



──私は大丈夫。大丈夫。大丈夫……。



けど、自由を奪われる前にやり残したことをやらないと……。




後悔したくない。




最初で最後の恋の相手。



『ハルくん』。


──…あなたに最後にもう一度、会いたい──…。