「私もね、別のテニスクラブでプレーをしていたから

ジュニアで活躍してた君のことは知っていたよ。」




「………………」


「そんな怖い顔しないで。

…可愛い顔が台無しだよ。」

左腕で私を抱きながら、

右手で器用に私のメガネをとる。


「やだっ!返して!!」


手を伸ばすが、背の高い先生は腕を上げ


そんな私を見ながらまたフッと笑い、


「入学式で君を見たときは正直驚いたけど───」





「メガネの下に隠れている顔は変わっていない。


むしろ、綺麗になった。」

私の顎を、人指し指でグッと持ち上げる。



「──っ、止めてください!!」


横を向くけど、また無理矢理正面を向けられ、



「それが、関係あるんだよ。」



…先生は有り得ないことを口にした。



「君を、テニスの雑誌で見てから気になっててね。


もちろん、試合も見に行ったよ。テニスコートを走る君は──…まるで鳥のように綺麗だった──…」




──……?!


この人おかしいっ!!

変なこと言わないでよ!

気持ち悪い……



「離してくださいっ!!」

ドンッ────


ありったけの力で押し


先生は床に転げた。



「私、テニスは辞めたんです!…だから、私に関わらないでくださいっ!!」



─思い出したくないのに。
ありったけの声で叫んだ。



「まぁ、テニスのことはいいよ。雑誌には事故って書いてあったね。


──…そんなことより、あの野球場で君と出会って、これは運命だって感じたんだよ。

君は私の『運命の人』なんだよ。」


──思い出した…


野球場で追い掛けられたときに助けてくれた人…。


…冷たい目をしてた人だ。


あれが三崎先生だったなんて…。