三年生になって

五月に入るとすぐに、進路希望の紙を渡された。



テニスを始めたときは意識してなかったけど


いい成績を納めるたびに、コーチから


『簡単ではないけど、

清宮だったらプロでやっていけるよ』


そう言われてから、意識し始めたテニスのこと。


けど、今は…

納得のいくプレーもできなくて、結果も出ず…



『スランプ』



「美桜、進路決めた?」



後ろの席の彩が私をつつく。



「うん…まだ…」


昼休みの間、進路表と

にらめっこしてた私に声をかけてきた。



「美桜はテニスの強いところ受験するんでしょ?」



「ん……でも、

……色々心配が…」



ポツリと呟く。


彩は、私が不調なことを知ってたけど

決して口には出さなくて


理由も…たぶん。


恋に

乱されている。



私は溜め息をつく。そんな私を見て、

彩はいつもの高めの声で



「な〜に!ため息ついちゃってんの〜!!私たち、まだ中三だし、今からはっきり将来まで決めなくてもいいよね。

高校生になってから、考えても遅くないしさぁ〜


ちなみに私は共学!素敵な先輩をつかまえて毎日ラブラブ〜♪」


私に抱きついてきた。


「えー、でも彩は、

新<アラタ>くんとおんなじ高校でしょ?」


新くんは彩の幼馴染みでカワイイ男の子。


「だーかーらー!!違うって言ってるじゃん!!」



妙にあたふたしてる彩がおもしろくて、からかっちゃった。


ふとした優しさが

私の心を少し軽くする。




進路、自分で考えよう。

家に帰って、しっかり決めよ。



私は進路表を折りたたんでカバンにしまった。