もうひとつの卒業

「悔しかったんです」

しばらくして、拓馬はぽつりとつぶやいた。

その言葉は早苗の心の奥に届いた。

それはいつも心を閉ざして来た早苗にとって、久しぶりの感覚だった。


目の前で少年がうなだれていた。

「手を差し伸べたい」


心から早苗はそう思った。