拓馬は誕生日に父からカメラをもらった。

ニコンの小さいけれど高性能なデジカメは、多感な少年の心を捕らえて離さなかった。


拓馬は、もっぱら人物を写した。

最初の被写体は美鈴だった。

美鈴は拓馬の要求するあらゆるポーズに応えたが、嬉しくて仕方の無い美鈴は、いつも屈託の無い笑顔を見せ、それが返って逆効果となり、単なるスナップ写真の域を出る事が出来なかった。