入学式が終わって一週間が過ぎた。


美鈴と拓馬は同じクラスには、なれなかった。

しかも、中学の同級生は二人を除く全員が別の学校に進学した。

そのことが美鈴を、一層孤独にさせた。


部屋で一人になると美鈴は、雨の日の出来事を思い出した。

この部屋で拓馬とキスをした。

静かで濃密な時間。

永遠に続けば良いと思った。

ずっとずっと、終わらなければ良いと。

でも、そうはならなかった。

下の階からおじさんに呼ばれた。


「美鈴ちゃん。来てるの?」

顔が青ざめた。

一気に現実に引き戻された。

急いで取りつくろったけれど、もしもあの時、おじさんに呼ばれなかったら・・・・、私達二人は何処まで行ったんだろう?


美鈴の胸には、拓馬の手の感覚が今でも残っていた。