二人がホテルを去ってから一年が過ぎた頃。

春の陽だまりの昼下がり。

菜の花が咲き乱れる河川敷を横目に、小高い堤防の一本道を早苗はベビーカーを押しながら歩いていた。


中には、まだ人生をスタートさせたばかりの小さな生き物が
時を正確に刻み、出来たばかりの小さな手を握りしめていた。