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「そして旅に出てから8年後、お前を見つけた。」



そうカリアが話し終わるが、僕はまだ動けずにいた。



考えればわかることだった。

出会ってからもう7年も経っているのに、まったく変わらない若さの師匠たち。



今はこの状況はわかるけど。

でも動けない。



だってこれから僕は………







カリアは笑う。穏やかな、笑顔。



「私たちを、食べてくれ。」






そんなこと、できない。

ずっといっしょにいた、師匠たちを。

食べるだなんて。



だが、僕の中の『選ばれしヒト』が言う。



サア、タベヨウ。


オナカガヘッタンダ。


サア、ハヤク。



タベヨウタベヨウタベヨウ。




タベテ、ヤクメヲハタソウ。






うるさい。

うるさいうるさいうるさい!



僕がどれだけ必死に抵抗しても、『選ばれしヒト』は黙ってくれない。


ただただ目の前の僕の師匠を、食べようとする。




それに僕は、ぼろぼろと涙を流す。

もう消えたはずの感情が、暴れる。




それを見たカリアとファギヌが、悲しげに顔を歪める。


ファギヌが言う。


「……つらいことをさせて、ごめんね。」



その顔が、あまりにもつらそうだから、僕はまた泣く。




きっと彼らは生きたいから。


一族のために、捨てた命。


我が子のために、救われた命。


たくさんの命を、背負った命。





ただこの日のためだけに、生きてきただなんて。


命をかけた、子供まで捨てて。





カリアがまた悲しく笑う。


「ほんとうに、すまない。

だが、世界のためにも、食べてくれ。」




その瞬間。


『選ばれしヒト』の意識が、急に強くなる。



目の前のふたりを見据える。




景色が、変わる。