青年は突如空を仰いで、私に近づく。
その様子は少し焦っているようにも見える。
「…お前、俺と会う前に何か見なかったか?」
急に言われて少し驚いたが、思い出す光景が一つ。
「女の人…。」
それに、ぴくりと片眉を上げる。
「女…。」
そして、悩んだ素振りを見せたあと、
「…ここは直に『異形』が集まる。早く此処から立ち去ったほうがいい。」
そう言って青年は檜山さんの傍に行き、素早く肩に乗せた。
「…安全な場所まで連れていってやる。」
「あ、ありがとうございます!!」
そう言ってもらえると思わなかったので、動揺しながら答える。
…これで取り敢えずは助かったのだ。
しかも、重要な情報まで手に入れた。
ほっと安堵する私に、青年はもう一つ付け足した。
「…ただで連れていくわけではない。この男を置いた後、お前には他に用がある。」
「え…。」
何かと聞こうとする前に、青年は早くしろというように先に行ってしまった。
私は痛む体に鞭を打ちながらも、必死に後ろを追いかけた。
