青年は掴んだ手を一瞥すると、私を見つめた。

ちらり、と檜山さんをみる。

既に昏睡状態にあり、息も次第に弱くなっている。
今この人に助けを求めなければ、小屋に戻る前に死んでしまうか、運悪く再び化け物に出会って二人とも死んでしまう。



「…助けてください。」


懇願する。もうそれしか頭にない。
青年は少しの間黙ったが、直ぐに口を開く。

「…何を?」


…何を!?
そんな事本気で言っているのか!?

至極真面目に訊くものだから、腹が立って胸倉を掴んだ。

「死にそうなんです!!」

そう叫ぶと、青年は檜山さんの方を見遣った後、

「恐らくあの男は死ぬことはないだろう。…少なくとも今さっき受けた傷では。」

「あんなに血が出てるんですよ!?」

普通じゃそんなこと考えられない。

「完全に息の根を止められない限り、ここではある程度再生能力が効く。
…まぁ、その分寿命が縮むがな。」

さらに付け足す。

「その寿命も其処まで一気に縮むわけではない。怪我の種類や精神面が絡むかどうかで異なってくる。

その男は外傷のみ。放っておけば、時間はかかるが自己で治癒していくだろう。」


…知らなかった。


「此処のこと…なんでも知ってるんですね。あなたは一体…?」

少し疑いの目で見ると、青年はふっと自嘲的な笑みを浮かべた。


「…お前よりは知っている程度だ。」


その表情からは嘘をついているようには見えなかった。
だからと言って、この人の全ては信用できないが。