何者かが前に立ちはだかり、化け物の鋭く尖った刃物のような手を自分の持つ刀で切り落す。

ザンッと大きな音がした後、何かが地に落ちる音がした。


……え?


声をかけられ、目を開けるとまず視界に入ったのは――金色。

靡く髪に既視感のある黒い衣服。


この人はもしかして…


その人はちらりと私に振り返った。
その姿を見て確信する。

やはり、初めに会った青年だ。

深紅の瞳が私を一瞬捉えた後、直ぐに逸らされ前に向けられる。

その先を見ると、化け物がよろめいている。

その近くには四躰の何本かが転がっていた。


…この人が?


私の見ないうちに一瞬にしてやったというのだろうか。


再び襲いかかる化け物に対し、青年は至近距離まで素早く入り込み、刀を思い切り振り落とした。


化け物から体液が一気に吹き出し、視界を染める。

それを無表情で浴びながら最後の止めに中心に刀を突き刺した。

化け物は大きく痙攣した後、その場に崩れ落ちて動かなくなった。


青年は軽々と化け物を倒した。


それを見届けると、青年はゆっくりとした動作で刀を鞘に収め、こちら側に振り向く。

目の前まで来ると、私を見下ろしながら目を細める。


「…二度目はないと思え。」


青年は血だらけの自分の手に目をやると、それを服で拭った後、再び向きを変えて歩き出す。



――――だめ。

私はいつの間にか青年の腕を掴んでいた。