「…許さない。」
無謀だなんてことは分かってる。
このまま逃げたほうが良いことも分かってる。
…でも、そんなことをすれば後悔する。
檜山さん無しで無事生還なんてありえない。
…皆揃って此処を出てやる!!
化け物が四躰を使って地を踏みしめ、攻撃態勢に入った。
―――ヒュと、軽やかに飛び跳ねると、再び四・五本の四躰を鋭く尖らせて私の心臓を狙う。
「――っ。」
その速さに反応が遅れて脇腹を掠めた。
一寸なのに其の痛みに顔が歪む。
化け物は私を通り過ぎると、方向を変えてまた攻撃を繰り出す。
一回、二回と繰り返すたびに、体中に傷が出来る。
刀を振り回したって、全く当たらない。
次第に刀の重さに腕が疲れてくる。
吊りそうになりながらも必死に抵抗する。
「―――ぅぐっ!!」
私の反応が大幅に遅れ、深く足を刺された。
痛みにその場に崩れ落ちる。
ジンジンと痺れて動かない足。
物凄い速さで向かって来る化け物。
――――避けられない!!
接近する四躰の先に、ギュッと目を瞑った。
―――――其の時、
「…お前、運がいいな。」
